レポート

メンバーシップ型からジョブ型への移行に関して

人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の 割合が 6%で米国の 32%と比べて大幅に低く、調査した 139 カ国中 132 位と最下位クラスで あったということは、コロナ下においても以前と変わらない事実であろう。 すなわち、1980~2000年ごろに生まれたミレニアル世代が求めていることとの乖離が生じているということでもあると思われる。 そのひとつの解決策として、ジョブ型への移行とともに、硬直化する日本の組織に対して、人材の流動化がさけばれているが、安易に人材の流動化ばかりを求めることではないと考えている。 そこで、今回のコラムでは、ビジネスが SDGsを中心にサステナブルなビジネスへと移行するなか、人事側面でのサステナブルな人事というものはなにかということにスポットをあて、適正な人材の流動化における考え方を明らかにしていきたい。 また、コロナをきっかけとして、働き方が変化するなか、東京一極集中から国内地方、そして、グローバルで拠点・人材を管理していく上での次世代の人材マネジメントの在り方についてもふれていきたい。

日本は「熱意あふれる社員」の 割合が 6%で米国の 32%と比べて大幅に低く、調査した 139 カ国中 132 位と最下位クラスで あったということは、コロナ下においても以前と変わらない事実であろう。

安易に人材の流動化を追い求めては、組織と個人のエンゲージメントは弱まり、競争力を 失いかねないと考えている。しかし、人材の流動域を正しく、見据えることで日本株式会社は、見違えるほど強い組織となっていくはずである。 まず、流動性は、1 つの会社・組織で働き続けるのではなく、転職などを通じて柔軟に仕事移っていける度合いのことである。 日本の企業は新卒一括採用や年功序列、終身雇用などの制度を採り入れており、新卒の入社から定年まで 1 つの会社にとどまる正社員が多く、日本は、国際的に低いとされている。 日本が国際的に大きく後れを取っている原因の 1 つがその「人材の流動性」が低いことである。日本では 1 つの企業でずっと働き続ける人が多く、多様性も少なく、会社のビジネスが陳腐化したとしても、そこでカスタマイズされたスキルしか持ち合わせないため、セカンドキャリアの道も閉ざされ、結果的に、一つの会社にぶらさがるしかないといった形で選択の余地すら与えられていない。 日本の流動性は具体的にどの程度かというと、転職経験者の割合はドイツ 42.7%、ア メリカ 38.2%、イギリス 34.7%となっているのに対して、日本はわずか 5.8%であったという国際的な研究結果もある。 また、総務省の労働力調査によると年間転職希望者は約 800 万人に上るが、実際に活動をしたのは約300万人弱にとどまる。日本の転職率が低い理由の 1 つとして、終身雇用、年功賃金といった「日本的雇用慣行」が挙げられる。 日本企業は、これまで右肩上がりの高度経済成長を背景に、会社の在籍期間年数と比例し、個人の能力が習熟していく終身雇用を前提とした「メンバーシップ型」といわれる 「職能主義」を長年しいてきた。 2000年以降、バブル崩壊を皮切りとして、どちらかというとコスト抑制の意味で導入されたのが欧米型の人事制度としての成果主義であった。新型コロナの影響もあり、改めてその成果主義の本当の意味での徹底を図ろうというものである。 成果主義を徹底するということは、成果を正しく図るために、職務範囲を予め定め、そのなかで成果を評価する、いわゆる「ジョブ型」といわれる「職務主義」への移行であり、 それは、すなわち、「メンバーシップ型」といわれる「職能主義」からの脱却を意味する。 そのジョブ型において、今後、人材の流動性は劇的に高まっていくことが予想される。それは、転職を希望する個人も人材の受け入れ側も共通のジョブを通じてキャリアの機会提供をその組織風土としてのカルチャーフィットを二の次で行うことができるからである。 このような転職市場の活性化を見据えたときに、個人側には、エンプロイアビリティー (雇用され続ける能力)といった観点ではなく、キャリアセレクタビリティー(キャリアの自己選択能力)を高めることが求められる。 企業側のライフタイムエンプロイメント(終身雇用)から個人側のライフタイムコミット メント(生涯を通じた社会に対する貢献)への軸足の移り変わりとともに、その組織と個 人のベースは「終身信頼」のもと、持続的な関係性が構築される状態を日本で築き上げていくべきではないかと考える。